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【ブックレビュー#31】「見てる、知ってる、考えてる 」 中島芭旺

[ブックレビュー] 2017年01月11日
オトナはコドモにシットする

OBPアカデミアにやってくる本のルートは二つある。
ひとつは、スタッフが時流や好みに基づいて選んだもの、
もうひとつは、ライブラリー会員の皆様からのリクエスト本。

今回取り上げる『見てる、知ってる、考えてる』は、後者の方法でOBPアカデミアにやってきた本です。



どうも、巷で話題の本の様ですが、時流に疎い島村はまったくこの本の事を知らず、
「『芭旺』って何と読むんだろう?芭蕉の芭だし、まさか『ばお』じゃないよね」とググるところからスタート。

……「ばお」でした。
近頃の名前の多様性には驚かされます。

でも、子供の名前が個性的なのは今に始まったことではなく、江戸時代には寺子屋の先生も「今の子供は名前が難しい」とぼやいていたらしいので、これは日本人の特性なのかもしれません。

閑話休題。

『見てる、知ってる、考えてる』は、とても読みやすい本です。

10歳の芭旺くんがつむぐ言葉はシンプル。彼の素直な心と、己との戦いがひしひしと伝わってきます。

世間では「天才」と呼び声が高いそうなのですが、なんというか考えていることは普通の10歳な気がしました。
「あー、これくらいの年齢の時ってこういう事考えていたなぁ」と懐かしく、ちょっぴり芳ばしい。
もちろん、それを言葉として紡ぎ、本にしたという行動は「天才」のなせる業かもしれません。

そして、この本を捻た大人が読むとどうなるか。
「嫉妬」します。

これくらいの時は、こういう事が言えるんだよ。
でも、大人になるといろいろあって、そうも言ってられないんだよ。
君がまだ経験してないだけで、君のないと思っている事象も大人には発生しちゃうんだよ。
それだけ。

とまぁ、斜に構えたことを、ひとつひとつにイチャモン付けたくなったりするわけです。
それが、芭旺くんの凄いところなのかもしれません。
文句を言うってことは、彼の言葉が流れずに、ちゃんと刺さってきてる証拠なのですから。


『見てる、知ってる、考えてる』は、ちゃんと自己啓発本としても生きるし、飲み会の余興としても生きる、そういう懐の深い本だと思います。

個人的には、この本は何人かでワチャワチャ言いながら楽しむのがいいと思うなぁ。
※不真面目な大人の意見です。


(ブックソムリエ 島村瑞穂)