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【ブックレビュー#1】『種をまく人』ポール・フライシュマン著 片岡しのぶ訳

[ブックレビュー] 2015年11月20日
クリーヴランドの移民の町で、一人の少女がゴミ捨て場だった空き地に豆を植えたことから物語は始まります。

「亡き父親に認めて欲しい」という健気な願いを込めて植えた6粒の豆。それはやがて、町にとってかけがえのない宝物「空き地の農園」へと発展していきます。

本作を構成するのは、空き地に集う人々の問わず語り。

それぞれの背景と畑にまつわるエピソードを読み進めるうちに、ゴミだらけだった空き地は、緑豊かな畑へと変貌し、織りあがった物語は、一枚の毛布の様に町の人々と、読者をやさしく包み込みます。

人恋しくなる季節に、ほっと心が温まる作品でした。

「作家と読者の集い100回突破記念フェア」宮下隆二氏の推薦図書コーナーにございます。



(見習いブックソムリエ 島村)