本の部屋Blog

【ブックレビュー#7】『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ 著、土屋正雄 訳

[ブックレビュー] 2016年01月12日
こんにちは。見習いブックソムリエの島村です。

2016年の新ドラマ、すでにチェックされていますか?

私が気になっているのはTBS金曜夜10時放送の「わたしを離さないで」です。

 

このドラマの原作は日系イギリス人カズオ・イシグロの同名の小説が原作です。

原作の小説はミリオンセラーの人気作で、2011年には映画化もされています。

 

私がこの本と出合ったのは全くの偶然で、数年前、本屋さんの文庫本コーナーを徘徊しているときに、「外国文学なのに日本人のような名前の著者がいるなぁ」と手にしたのが切掛けでした。もちろん、購入当時これが世界的なヒット作だとは全く知りません。

そうやって、なんとなく読み始めた本でしたが、今でも心に残る作品となりました。

 

物語はイギリスを舞台に「ある使命」を持って生まれた子供たちを描きます。

主人公キャシーは制限の多い環境に置かれていて、彼女の目線で進む物語は大半が奇異な世界であるような印象を受けます。その奇妙さの理由が明らかにされたときには、哀れで悲しいような、また恐ろしい架空の話と一笑することもできないような、複雑な心境に陥ります。それは冷たく荒涼とした世界を薄い目隠しをして彷徨っているような読書感でした。

 

けっして明るく楽しい作品ではありませんが、何年たっても気になり続ける作品です。

原作はイギリスが舞台ですが、ドラマでは日本を舞台にアレンジが加えられています。

それがどのように作用するのか楽しみでもあります。

 

時代を超えてお勧めしたい小説だけに、ドラマも世界感の構築に成功していて欲しいと心より祈っています。

初回は2016年1月15日放送です。前作と合わせてチェックしてみてくださいね。

(見習いブックソムリエ 島村)