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【ブックレビュー#8】『黄金の剣士 島原異聞』近藤五郎 著

[ブックレビュー] 2016年01月19日
昨年ご紹介しました『なにわ万華鏡 堂島商人控え書』で華々しいデビューを飾られた、近藤五郎氏の最新刊が発売されました!

楽しみにしていたので今回も一気に読んでしまいました。

 

舞台は江戸。上州の小さな村の若武者・十束輝之丞(とつかてるのじょう)は「《帰天合一流》の道場の噂を聞いたら、いかに遠方であっても、必ず入門し教えを受けるのじゃ」という父の遺言に従い、麻布古川町の藤森数馬の道場へ入門します。

そこで出会った仲間とともに輝之丞は、父の悲願であった主家の再興に乗り出します。

 

一言でいえば、島原の乱に端を発するお家再興のスペクタクル時代劇。

その中には、『南総里見八犬伝』を彷彿とさせる仕掛けや、当時の大家の懐事情、キリスト信仰などが織り込まれ、とても刺激的な物語になっています。

 

前作に引き続き、登場人物は個性豊かで、著者の愛情を感じました。

一本気な輝之丞、おおらかで親しみやすい道場主の藤森数馬、熱さを内包した端正な若様の常盤主水、市子(口寄せを生業とする人)親子の宇芽と多江などなど…。それぞれの物語をもっと読みたい!と思うあまり、若干の物足りなさすら感じます。

 

私のお気に入りは市子親子の宇芽と多江。

もし続編があるのなら、宇芽さんの過去と、多江ちゃんの未来の物語が読みたいです。

 

ちなみに、前作でも感じていましたが、近藤氏の作品は食べ物の描写が秀逸です。

ご本人もなかなかの健啖家なのでしょうか?

 

(見習いブックソムリエ 島村瑞穂)