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【ブックレビュー#12】『ロボットの脅威 人の仕事がなくなる日』 マーティン・フォード 著 松本剛史 訳

[ブックレビュー] 2016年02月16日
「ロボットが進化したら、みんなが幸福になる」多くの人がそんな未来を思い描いてきたのだと思います。

何カ月もかかった道のりを数時間で移動出来たり、地球の裏側の人と会話できたり、技術の進化は確かに私たちの暮らしを助け、多くの幸福を与えてくれました。

しかし、ロボットたちが進化するにつれて、多くの分野で必要な人手が不要となり、生産量は増加しているのに、雇用は減少し、賃金は停滞、貧富の差が拡大してしまいました。

ロボットの被害をこうむっているといえば、ついブルーカラーの人々をイメージしがちですが、その脅威はホワイトカラーにまで及んでいるのです。
 

『ロボットの脅威』では、各分野でどのようなロボットが登場しているのか詳細な記述があります。例えばナラティブ・サイエンス社のプログラムは、情報を収集し流暢な記事を作成することができ、フォーブスなどの一流メディアで使用されています。しかもその記事の作成スピードは30秒に1本!メディアに占める自動生成記事の割合はどんどん増えているそうです。

 

機械化と共存できる仕事はどのようなものなのか?社会全体で幸福になるにはどうすればよいのか?未来に向けた課題は山積みです。 

ロボットの脅威は、職を失うことにとどまらず、人類の生命自体にも及ぶかもしれません。

SF映画には、人よりも賢くなった人工知能が人類を滅ぼそうとする物語がよくありますが、実際に人工知能は貪欲に学習し、自己のプログラムをより良いものに書き換える能力を持ち始めています。人間には「ペルツマン効果」という現象があります。テクノロジーが進歩して安全性が高まると、さらなるリスクを冒したくなるのです。いつか人類よりも高い知能を持った機械たちは、そんな人類の事をどのように見るのでしょうか?


(見習いブックソムリエ 島村)