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【ブックレビュー#23】『踏みはずす美術史 私がモナ・リザになったわけ』  森村泰昌 著

[ブックレビュー] 2016年05月10日
現在、大阪・中之島の国立国際美術館では「森村泰昌 自画像の美術史」が開催されています。
現代アートに興味のある方ならよくご存じの巨匠ですね。
 
島村は現代アートにあまり馴染みがないので、初めてこの展覧会のチラシを見たときは「森村さんって誰?」という状態でした。けれども「なんだかとっても面白そう!」と興味を惹かれたので、展覧会の担当学芸員さんに会いに行ったり、ご本人の講演会を聴きに行ったりしてみました。本も読んでみました。3月のブックレビューでは森村氏の著書『「美しい」ってなんだろう?美術のすすめ』を取り上げましたので、なんとなく記憶にとどめて下さっている方もあるかもしれません。
 
当時は展覧会の始まる前で、実際に作品を見ることができず、その周囲をうろうろしているだけでしたが、会期中の今は見放題です。やったね!
 
というわけで、今回は再び森村氏の著書をご紹介します。
その名も『踏みはずす美術史』。


 
踏みはずす?なんだそれ??と思っているところへ、副題が「私がモナ・リザになったわけ」とついてきます。
美術史を踏みはずすとモナ・リザになってしまうのでしょうか?謎は深まります。
 
あとがきでも触れられていますが、「美術史を踏みはずす」こと、「モナ・リザ」になることの本質は、「自由になること」です。
 
中学校の課外授業言った美術館。「自由に見てきなさい」「もっとよく見る」と先生に指導された森村少年は、絵画をにらみつけ、果てには念力までかけてみようと試みますが、「美術鑑賞」のレポートを描く材料はいっこうにでてきません。
こういう経験をお持ちの方って多いのではないでしょうか?そして「なんか美術って難しいなあ。よく分からないなあ」と美術館から足が遠のく人も多いはず。
 
自由にするというのは存外に不自由なものなのです。
そこで登場するのがこの『踏みはずす美術史』。
森村少年の経験から出発して、いまや美術作家としてキャリアを積んだ森村氏の考えがふんだんに綴られた美術入門書です。
 
読んでいるうちに「なんかよく分からんなぁ」と思っていたアート作品を「ちょっと観に行ってみようかな」と思えばしめたもの。その際はぜ国立国際美術館へ。美術館を出るころには「なんか面白かったなあ」と思えるようになっているかもしれません。
 
 
ちなみに、
あさって、5月12日(木)午後11:17から放送の「ビーバップハイヒール」(朝日放送)にも、森村泰昌氏が登場します。きっと美術鑑賞術のお話がたくさんあると思います。こちらもお楽しみに。
http://www.asahi.co.jp/be-bop/
 
国立国際美術館「森村泰昌 自画像の美術史」の詳細はこちら
http://morimura2016.com/


(見習いブックソムリエ 島村)