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【ブックレビュー#24】『ぼくは閃きを味方に生きてきた』横尾忠則 著

[ブックレビュー] 2016年05月17日
「横尾忠則」と聞いて、みなさんはどんなイメージを思い描かれますか?
極彩色のポスター?どことなく不安な感じのするY字路の絵?そもそも横尾忠則って誰?
 
現代アートに疎い島村ですが、過去にいくつか作品を見たことがあります。というのも、横尾忠則氏は、画家であると同時に、多くのポスターやチラシのデザインを手掛けているので、「えらい奇抜なチラシやなあ」とたまたま手に取ったものが横尾氏のデザインだったりするのです。
また、日本画を観に行った美術館に、別企画としてポップアート作品が並べられていたこともありました。普通の日本画を見た後にそういう部屋に入ると、その派手さに度肝を抜かれます。頭の中が混乱して「なんじゃこりゃあ!」と思ったのを覚えています。
 
そんなことで横尾忠則といえば、ド派手でインパクトの強い作品の多い芸術家だと思っていました。
 
しかしそのイメージを覆す作品群に出会う機会があったのです。
縁あって観に行った神戸の横尾忠則現代美術館の「幻花幻想幻画譚」は全ての作品がモノクロ!
新聞小説の挿絵を集めた展覧会なので、当たり前と言えば当たり前なのですが、モノクロの作品を観ていると、それまで意識していなかった線の緊張感を感じ、宇宙的で深遠な彼の世界観に触れた気がしました。
 
今回ご紹介する『ぼくは閃きを味方に生きてきた』は、1992年に発行された『芸術は恋愛だ』を1998年の文庫化にあたり改題したものです。


 
60年代に初めてニューヨークへ渡りドラックに出会ったこと、宇宙人や天使との交信など、常人がなかなか遭遇しないであろうことが、当たり前のようにどんどん出てきます。カタイ頭で読んでいては振り落とされそうな内容です。でも、面白い。
もちろん芸術論についても数多く触れられています。
 
読んでいると、彼の頭の中をのぞいてみるような気持ちになります。
作品をご覧になったことのある方、この発想はどこから出てくるのだろうと不思議に思われた方が読めば、大いに納得感を得られることでしょう。そして横尾忠則って誰?と思われた方が読めば、彼の作品を実際に見たくなるかもしれません。
 
OBPアカデミアでは6月9日(木)19時より
横尾忠則現代美術館の学芸課長・山本淳夫氏を迎えて、
OBPアカデミア世界文化講演シリーズ第3回
「横尾忠則入門~異界とつながる画家の生涯をなぞる~」を開催します。
日ごろ横尾忠則氏と仕事をされる山本氏から、どんなお話が飛び出すのか乞うご期待ください。
詳細はこちら:https://obp-ac.osaka/event/552.html

参考URL
横尾忠則現代美術館
http://www.ytmoca.jp/exhibitions/2015/12/3-1.html
 
(見習いブックソムリエ 島村)