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【ブックレビュー#27】『剣客将軍 徳川家重 花の宰相』近藤五郎 著

[ブックレビュー] 2016年06月07日

6月最初のブックレビューは、なんとも嬉しい本のご紹介です。

 

本日発売の『剣客将軍 徳川家重 花の宰相』、作者の近藤五郎氏はOBPアカデミア開館当初からの会員様です。
近藤氏によれば、本作品の執筆期間は去年の10月から今年の1月。執筆はすべて、OBPアカデミアのお気に入りの席でされたとのこと。まさに、メイド・イン・OBPアカデミアの小説です。
 
ライブラリーから大阪城を眺めなら書く時代小説。
作品の舞台は江戸ですので、時には大阪城が江戸城に見えたかもしれませんね。
 
「小便公方」と呼ばれた9代将軍徳川家重は、虚弱で大奥にこもりがちな将軍であったと言われています。そのため「脳性麻痺の障害があったのではないか?」「実は女性だったのではないか?」という説がささやかれています。
 
大奥にこもり正室亡き後は、側室を寵愛したと言われる家重ですが、本作品の中では一途な愛妻家として描かれています。副題の「花の宰相」とは芍薬の花のこと。
身分を隠して植木職人に扮する家重は、亡き妻のために芍薬の栽培に勤しみます。
 
芍薬の他にも、家重を窮地に陥れる南蛮渡来の植物が出てきて、タイトルこそ「剣客将軍」ですが、実のところ「植木屋将軍」と呼びたくなるストーリー。
 
大奥にこもりがちな小便公方と見せかけて、その実態は町人に交じって植木の手入れに精を出す、思慮の深く志の高い将軍。それが近藤氏の描き出す家重像です。
 
近藤氏の作品は、いつも小気味のいいキャラクターが魅力です。
今回も個性的なキャラクターたちが生き生きと描かれています。
 
それからやっぱり特徴的なのが食べ物の描写!
毎回出てくるものがおいしそうなのです。
著者はかなりのグルメと見ているのですがいかがでしょうか?
 
(見習いブックソムリエ 島村)