本の部屋Blog

【ブックレビュー#28】『城崎裁判』万城目学 著

[ブックレビュー] 2016年06月15日
「城崎でしか買えない本がある」

 

旅先を城崎温泉に定めたとき、そんな情報を目にしました。

城崎と言えば志賀直哉の『城崎にて』が有名。

そのほかにも与謝野晶子、島崎藤村、泉鏡花などそうそうたる顔ぶれが訪れた歴史ある温泉地です。

 

「文学と温泉」を武器に町おこしを図る城崎で、城崎温泉旅館経営研究会が立ち上げた出版レーベル「本と温泉」。

このレーベル最大の特徴は、すべての本が地域限定発売であること。

まさに城崎でしか買えない本なのです。

 

本を入手できる場所も書店ではなく、外湯、旅館、お土産物屋さん、観光施設とさまざまです。

お風呂に行って本を買う。ここでしかできない体験です!

 

「本と温泉」から発売されている書籍は現在2つ。

第一弾の注釈つきの『城崎にて』、そして第2弾が『城崎裁判』。

 

『城崎裁判』ではスランプに陥った作家が、城崎を訪れ『城崎にて』の主人公が犯したイモリ殺しの罪の被告として裁判にかけられます。もちろん『城崎裁判』の主人公はイモリ殺しなんてしていません。同じ職業だというだけで被告にされてしまうのですから無茶苦茶です。

外湯につかるたびに不思議なできごとに遭遇する主人公。イモリ裁判の判決やいかに?!

 

タオルで作られた装丁は、机の上に置いてあれば本だとは絶対に思いません。

お茶をこぼしてもこれで拭かないでくださいね。

 

「本と温泉」では今年2年ぶりの新作が発売されるそう。

発売したらまた城崎に行かなくちゃ。