OBPアカデミアのデザインコンセプト

有)キアラ建築研究機関 代表 松本 正

Campo dei Fiori(花園)としての学びの空間
あるいは学びの場の原形としてのAgora

今回、OBPアカデミアの設計をご依頼いただいたとき、(株)まなれぼの吉川社長との共通認識として、「オフィス的あるいはカルチャースクールの教室的な空間から脱却すること」がありました。

OBPは約30年前に開発された、大阪のビジネス集積地の嚆矢として、当時においては最先端のオフィスビルであり、その機能性は30 年経った今も十分に通用するものであります。しかしながら、今回のOBPアカデミアは、オフィス的機能性ではなく、むしろ日常を機能的オフィス空間で過ごしている人々にとっての精神的な「解放区」(Asile)としての様相を持つ必要があるのではないか。計画の当初、そう思い描きました。

と同時に、OBPアカデミアのプログラム(ライブラリー、カフェスペース、様々なスクールに対応する大、中、小の教室、事務スペース、ストックルーム)を十全に果たすとともに、将来に向けても柔軟に空間が対応していくことが求められました。 そこで想起したのが、「Campo dei Fiori(花園)」というコンセプト。

OBPアカデミアの様々な空間が、様々な様相を持ちながら、全体としての統一性を確保している、あたかも花園が、「花園」というテーマのもとに、それぞれにそれぞれの花を咲かせているような、その中を訪れた人が、自由に本を取り、くつろぎ、学んで行く。それはまた、学びの場の原形でもあるのではないか。 「学校」、古代ギリシャの時代、一本の木の下に、生徒や教師が集まり、自由に語り合ったことから始まった、と言われています。それが、やがてAgora(市民の集う広場)となり、古代ローマにおいてForo から現在の英語で言う「Forum(フォーラム)」へと展開してきたのですが、そのような学びの場の自由さや本来性を持って欲しい。

そのような思いをもって計画しました。

オフィス的様相を消し、風景を取り込む

空間の様相を「オフィス」的に感じさせている要因は、カーテンウォールです。

そこで、全体を木製のカウンターと棚で連続させ、カーテンウォールの気配を消しました。そうすることで、周囲の大阪城公園の風景が訪れる人の視覚に直接届き、訪問者は、豊かな風景の中でくつろぎ、学ぶことができます。

中心の「樹」となる事務スペース

もう一つ空間に「オフィス」的印象をもたらしているのは、全体がスクウェア(直線的)な構成で統一されていること。

そこで、OBP アカデミアの心臓部となる事務スペースを、単に直線的な壁で仕切るのではなく、書架を集積し、木質材料を使った曲線の壁で覆うことで、全体のシンボルとなる「樹」としての役割を持たせました。

併せて、事務スペースの周囲に、樹木のある円形ソファを配しました。それらによって、ライブラリーからカフェスペース、教室へと空間を緩やかに分節し、訪問者の様々な活動が繰り広げられます。

家具(花)によって様相を変える

ライブラリーの家具は、集中して学べるよう、間仕切りのついた机を基本に構成しています。
また窓周りは、木製カウンターで、周囲の風景を楽しみながら学べるような椅子を、カフェスペースには、くつろいで本を読み、喫茶できるよう様々な色のストゥールを配しました。

テーマをもった、教室スペース

OBPアカデミアは4 つの教室スペースがあります。
大きい教室が一番汎用性の高い場所で、一般の教室に最も近いスペースです。
それに併設する二つのガラス張りの教室は、それぞれ「木の部屋」「緑の部屋」というテーマを与えました。とは言え、実際に床や天井に木を張り回したり、植物を茂らせることは、機能上、また教室の多様な使われ方を考えたとき、有利ではありません。 そこで、そこに置かれるテーブルをガラスの天板にして、そこにカンナで削り出したおがくずや、植物を挿入することで、部屋の様相を変え、また僅かに「木」や「植物」の香りがすることで、訪問者にテーマと空間の違いを感じてもらえるよう計画しました。

また、4つの教室の中に、OBP アカデミアの他の空間とは全く様相の違う部屋があります。そこは、「1 室、他とは全く違った、不思議な部屋が欲しい」という吉川社長のご希望から生まれました。 木製格子の扉を抜けると、色調を落とした壁紙に覆われ、前面に障子を模した建具の入った空間が現出します。また、そこは茶道や華道といった日本的なレクチャーに対応する部屋にもなっています。

OBP アカデミアで様々な豊かな活動が行われることを期待しています。

有)キアラ建築研究機関
代表 松本 正

Tadashi Mat sumoto松本 正

略歴

  • 1963
    奈良県生まれ
  • 1987
    京都大学工学部建築学科卒業
  • 1989-1990
    ミラノ工科大学留学
  • 1994
    京都大学大学院博士課程修了
  • 1996
    F. O. B. Association + @ limite 共同設立、共同代表
  • 2001
    松本 正 + Kyara Partners and Associates 設立、主宰
  • 2006
    有限会社 キアラ建築研究機関に改組
  • 現在
    有限会社 キアラ建築研究機関 代表
    一級建築士
    滋賀県立大学非常勤講師
    新大阪ロータリークラブ会員

受賞等

  • 1997
    東京建築士会東京住宅建築 (F. O. B.)
  • 1999
    通産省 グッドデザイン賞 (F. O. B.)
  • 2008
    財団法人日本産業デザイン振興会 グッドデザイン賞 (KYARA)
    受賞作品 : 集合住宅 アクアプレイス大阪 レジェンド

竣工作品

住宅

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共同住宅

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