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【ブックレビュー#2】 『重力と恩寵』シモーヌ・ヴェイユ著 田辺保訳

[ブックレビュー] 2015年11月28日
フランスの思想家シモーヌ・ヴェイユがカイエ(ノート)に書き留めた言葉をまとめた世界的ベストセラー。

ユニークで象徴的な言葉を鍵に、人のあり方、徹底した自我の否定、純粋な愛などが綴られます。

思索の断片を読み進める作業は、彼女の頭の中をのぞき込むような感覚を呼び起こします。その内容は示唆に富み、読む人に何かしらの気づきを与えてくれますが、同時に彼女の苦悩の深さも感じさせます。

「幸福な人において、愛とは、不幸のうちにある愛する人の苦しみをともに分かちあいたいとねがうことである。」P.107

「人を傷つける行為は、自分の中にある堕落を他人に転嫁することである。だからこそ、まるでそうすれば救われるかのように、そういう行為に走りがちなのだ。」P.123

困難な状況にあるとき、また幸福の最中に足元をすくわれそうなとき、何気なく開いたページが助けとなってくれそうな一冊です。



「作家と読者の集い100回突破記念フェア」津村 記久子氏の推薦図書コーナーにございます。

 (見習いブックソムリエ 島村)