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ブックソムリエ鍋島の今月の1冊 4月

[ブックソムリエ鍋島の今月の1冊] 2016年04月02日
『アルケミスト』パウロ・コエーリョ著
4月ですね。就職、転職、入学など、人生の旅立ちを迎えるこのシーズンに思い出す本といえば、まず『星の王子さま』でしょうか。この名作についてはみなさんよくご存じのことと思います。すてきな物語を通じて「大切なものは目に見えない」というメッセージを伝えるというのは文学のもっとも普遍的な意味なのかもしれません。その代名詞ともいうべきこの作品、すばらしいですね。
 
 この“王子様”に負けず劣らず人生の大切なものについて語りかけてくれるのは『アルケミスト』という作品です。スペインの田舎で羊飼いをする少年が、ある日夢で「ピラミッドへ行くと宝物を手に入れることができる」と告げられます。さてこの夢、信じるべきか捨て置くべきか。ここから彼の運命の歯車がくるくると回転をはじめます。


 
 この摩訶不思議な冒険譚、読後の清涼感が半端ないのです。なぜそんなに爽やかな気持ちになるのか、何度読み返してもその根拠は出てきません。確かにそこここに教訓めいた素敵な言葉が出てきますが、その部分だけが感動なのかというとそうではないのです。そういう性質があの“王子様”に似ているところです。人生に深々と傷ついたときに、魂の深部で傷を癒してくれる物語というのは、こういう作品のことを言うのだと思います。この不思議な物語を書いたのはパウロ・コエーリョ。ブラジルの作家です。
 
 OBPアカデミアのライブラリーにこの本は、作家の西村貴好さんの推薦本として入っています。西村さんは当館で展示している隆祥館書店作家と読者の集い100回突破記念フェアの中のお一人で、日本ほめる達人協会というユニークな活動を主宰されている人です。なぜこの本を推薦されているのか、あわせて西村さんのコーナーもお楽しみください。なお、当館にはこの作品の英語版もあります。探し出してみてください。
 
(ブックソムリエ鍋島)