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【ブックレビュー#20】『とりあえず日本語で もしも…あなたが外国人と「日本語で話す」としたら』  荒川洋平著

[ブックレビュー] 2016年04月12日
「インバウンド」という言葉がいつの間にか耳馴染みのある言葉になり、デパートや駅では外国語での案内掲示が当たり前になりました。通勤電車に乗っていても、住宅地を歩いていても、外国の方を見かけるようになりましたね。
 
私の勤めるOBPアカデミアでも、見学や利用にいらした外国の方を案内する機会があります。
「いらっしゃいませ」と声をかけた後は、何語が来るのかと緊張の瞬間。
とはいえ、オフィス街の小さな施設にやってくるのは、日本でお仕事をされている方がほとんど。
「いらっしゃいませ」の後には、「ちょっと中を見せてください」と日本語が返ってきます。

「あ、日本語でいいんだ」と安心して応対するものの、なぜかいつも通りにできません。
「日本語でいいんだ」の次には「この人、どれくらい私の日本語を理解してくれるのだろう?」という不安が湧いてくるのです。
その結果、ややぎこちないゆっくりとした稚拙な日本語で話してしまうこともしばしば。

みなさんもそんな経験はありませんか?

荒川洋平さんは、日本語を母語とする人が、外国の人に対して日本語で応対をすることを「対外日本語コミュニケーション」と呼び、外国人に対して日本語でコミュニケーションすることを推奨しています。

しかしその反面、対外日本語コミュニケーションが増えるにつれ問題も生じてきているようです。
『とりあえず日本語で』では、私たちが引き起こす問題を、いくつかのパターンに分類して紹介しています。

 


例えば、先ほどの私のような人は「子ども扱い型」。

経験上もっとも身近な日本語が充分でない人=「子ども」に、外国人をなぞらえてしまい、相手を子ども扱いしてしまう人たちです。言葉は拙くとも相手は立派な大人。親切心から出ることとはいえ、わかりやすく伝えることと、子ども扱いすることは違いますね。気を付けなくてはと自戒します。 

他にも、外国人は日本語を話さないと思いこむ「外見予測型」、日本語が話せれば振る舞いも日本人と同じだと考える「直情直解型」など、ケーススタディーとともに紹介される分類は、日本に住むほとんどの日本人がどれかに当てはまるのではないかと思われ、読み進めていると「日本に来る外国人って思わぬところで苦労してるんだなあ」と、同情の心すら芽生えてきます。

外国人と交流するには「英会話を勉強しよう」と思いがちですが、日本国内で外国人と仲良く暮らしていくには「対外日本語コミュニケーション」こそが大切なのかもしれません。

 本の後半には、「我々にとって自然な日本語」を「日本語初級者にわかりやすい日本語」に言い替える演習問題もあるのですが、これがまたなかなか難しいのでぜひ挑戦してみて下さい。

 
(見習いブックソムリエ 島村)